道ゆく人は今日も素通り

「今日もみんな素通りしていく。」
「12時間も店を開けてても、誰も入ってこなかった。」
地方都市の商店街の一角では、もう何年も前からこんな状態が続いていた。
祖父の代から経営している文房具店で、今年30歳を過ぎたばかりの青年は、
ただただお客様を待ち続けていた。

大手が続々と通販に乗り出し、その参加で手数料を収入とするやり方になじめなかった青年は、開店休業状態の店内でつらい日々を過ごした。
「自分もお店も、誰にも必要とされていないのだろうか?」
悶々とする日々から脱出するまでしばらくのときを要した。

「お客様が訪れないなら、こちらからお客様を探しに行こう。」
青年は、動き始めた。
知り合いをしらみつぶしに訪問し、自分のできることを説明して回り、
ドアがあれば、訪問し説明した。

しばらくすると、筆記用具と帳簿の注文が入った。
わずかな金額の注文だったが、青年には忘れられない注文となった。
電話を置いてすぐさま、配達した。
「えっ、もう届けてくれたの?」お客様は、その対応に驚きその後あらゆることを相談してくれるお得意先となった。